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ブログ - 「花も紅葉もなかりけり」坐禅と最新脳科学⑱

「花も紅葉もなかりけり」坐禅と最新脳科学⑱

カテゴリ : 
ブログ
執筆 : 
人間禅東海岐阜・三重 2017/3/20 12:54


セロトニン神経が活性化されると、理由もなく、うきうき舞い上がる心を抑え、ストレスや不安で落ち込むこともない心の状態、すなわち禅でいうところの平常心をつくりだすと考えられます。
 心の三原色がバランスよくまざりあっている状態が、人間のあるべき姿で、快もあり、不快もある、なおかつ、それらを制御できる心があることが望ましい人のありかただとされる有田先生はドーパミンとノルアドレナリンに言及してさらに論究されています。
心の三原色、つまり紫の心の色は、ドーパミンの赤とノルアドレナリンの青がまざりあったものである。   
快である期待や意欲と、不快である不安やあきらめの気持ちがまざりあったものである。と。
試合や試験などに臨む時の心境です。
青と緑がまざりあうと、たとえば、水がうたれた庭の活き活きした苔の色、侘(わ)びや寂(さ)びにも通じるものがあります。
あきらめと平常心が重なると、寂びの真情が見えてくるともいえましょう。
少し脇道にそれますが、三夕の歌という新古今和歌集に有名な和歌があります。
この三夕の歌から、侘び、寂びの感情の由来と茶道との関係を述べてみたいとおもいます。
 
さびしさは その色としも なかりけり 真木立つ山の 秋の夕暮れ(寂蓮)
 心なき 身にもあはれは 知られけり 鴫立つ沢の 秋の夕暮れ(西行)
 見渡せば 花も紅葉も なかりけり 浦の苫屋の 秋の夕暮れ(藤原定家)
 
いずれも「秋の夕暮れ」を結びとしています。
共通しているのは「一般化された秋の風景」を否定して、「独自の秋の風景」に美しさ見つけている点です。
「一般化された秋の風景」とは月や七草、紅葉など新古今和歌集独特の秋の風景です。古今和歌集にはほとんど詠まれていません。
 この 「秋の夕暮れ」の寂寥感と美の感情はいつ誕生したのか、それは歌人にヒントがあるようです。
 西行と寂連、この二人は共に仏道を歩んだ歌人でした。
 二人が生きた平安末期から鎌倉時代にかけて、仏教では末法思想が信じられていました。
 末法思想は仏教の歴史観で、1052年を末法元年として釈迦の教えが消滅した「法滅」の時代になり、世の中が乱れるという思想です。



「苔庭とうらのとまやの秋の夕暮」

 その教えが正しいかのように、平安末期は「保元・平治の乱」、「治承・寿永の乱」といった大きな争いが起きました。
釈迦が消滅した。
これが歴史の授業で学んだ「鎌倉新仏教」の起こりでした。
別の仏の代表が「阿弥陀如来」でした。
阿弥陀如来は十億万仏土先の西方にいて、その地こそが極楽浄土とされました。
 西行の名にある「西」の文字も、この浄土を願ってのことでしょう。

万事が朽ち果てる無常な秋、その遥か西方に沈む夕日に浄土を望む。
 この言葉にならない荘厳な美しさを、寂連、西行は歌にとどめたのです。
ところが藤原定家。
「見渡せば 花も紅葉も なかりけり 浦の苫屋の 秋の夕暮れ」
寂連、西行の歌は「さびしさ」、「あわれ」といった感情を詠み込んでいて、歌に主題がありますが、定家の歌にはそれが一切ありません。
 あるのは花と紅葉の残像に浮かぶありのままの平凡な夕暮れ。
 まさに、鎌倉仏教、唐、宋より伝来された達磨禅の境涯を先取りしたかのようです。
鴨長明は歌論「無名抄」で、「秋の夕暮の空の景色は、色もなく、声もなし。いづくにいかなる趣あるべしとも思えねど、すずろに涙のこぼるるがごとし。これを、心なき者は、さらにいみじと思はず、ただ眼に見ゆる花・紅葉をぞめではべる。」と論じ、さらにこの感情が「幽玄」であると、記しています。

定家の「秋の夕暮れ」は、後の「わび茶」においても重んじられ、茶人千利休の師であった武野紹鴎が記した「南方録」、わび茶の秘伝書に、定家のこの歌こそが「わび」の心であるとしています。
まさに伝説的な歌ですが、さらに驚くべきはこの歌を詠んだ時、定家はまだ25歳でした。
百人いれば百通りの深い感じ方がある「秋の夕暮れ」「三夕の歌」です。


 
(西岐阜静坐会主宰、前岐阜洞戸坐禅道場長、日本中医薬会会員 葛西松堂 講演より)
 
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